個性派博物館

まるで世界一周旅行|「国立民族学博物館」は異文化の洪水だった

国立民族学博物館のナワル
chinspotwalker

大阪府吹田市の万博記念公園内にある「国立民族学博物館」、通称「みんぱく」。
ここは世界各地の人々の暮らし、文化、信仰、そして祭りを網羅した施設で、その展示規模は国内最大級。日本が世界に誇る民族学・文化人類学の“総本山”です。

館内はオセアニアから始まり、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジアへと地続きで繋がっており、歩くだけで「世界一周旅行」をしているような感覚で見学できます。
今回は、世界各地の土着の信仰を堪能できる“迷宮”を歩いてきました。

国立民族学博物館
館内マップ

まずはオセアニアへ

館内に入ると、最初に広がるのはオセアニアの世界。
中でもひときわ存在感が放っているのが、イースター島(ラパ・ヌイ)のモアイ像です。
モアイは11〜16世紀頃に作られた、祖先崇拝のモニュメントと考えられています。首から上のみで胴体はありませんでしたが、それでもかなりの迫力があります。

ドーン!

そのモアイ像の視線の先に展示されているのが、ミクロネシア連邦・サタワル島の航海用カヌー「チェチェメニ号」。なんとこの木造舟、GPSもエンジンもない時代に、沖縄まで約3000キロの航海を成し遂げた記録を持つそうです。
これで外洋を渡っていたと考えるとロマンしかありません。

3000kmを旅したチェチェメニ号

このエリアにはヴァヌアツの「割れ目太鼓」や、ニューギニア島アスマット族の木彫「ビス」なども展示されています。
中には「千と千尋の神隠し」のカオナシを彷彿とさせるような不気味で愛嬌のある仮面もあり、地域が違えど人類は同じような形に行き着くのだという、奇妙なシンクロニシティに感心してしまいます。

メキシコの死生観が面白い

続いてアメリカ大陸エリアへ。
ここで特に目を引いたのが、あまり馴染みのないメキシコの濃厚な民間信仰カルチャーでした。

  • 陽気すぎる「死者の日」

毎年11月2日に行われるメキシコの伝統行事。
展示されている骸骨人形たちは、我々日本人が抱く「死=忌むべきもの」というイメージを根底から覆してきます。骸骨たちが酒場で大酒を食らい、トランプに興じ、爆笑しているのです。死を恐れるのではなく、故人との再会を祝う強烈な祝祭のエネルギー。文化の違いをまざまざと見せつけてくれました。

  • 神話の立体化「ナワル」

今回の「みんぱく」遠征で、個人的に最も心奪われたのが「ナワル」です。
メキシコの民間信仰において、人間が変身した動物、あるいは人を守護する動物霊とされる存在でして、展示されていたヤギのナワルの造形がとにかく素晴らしい

海外のアニメキャラクターのようだけどちょっと違い、日本の妖怪やジブリとも違う。見たことがあるようで見たことのない、怪しくも愛らしい佇まい。最近話題の「こびとづかん」を思わせるような、きもかわいさがあります。

こびとずかん・ホトケアカバネ
こびとずかん・ホトケアカバネ

仮面だらけのヨーロッパ

ヨーロッパエリアでは祭礼用の仮面が壁一面に大量に並んでいます。

特にスイスの「クロイゼ」の頭飾りはなかなか異様な造形。
日本人の感覚だと少し不気味にも見えますが、現地では幸福や豊穣を祈るための存在です。
「みんぱく」の面白いところは、日本にいながらこうした文化の違いを体感できることでしょう。
一方で、ルーマニアの祭礼仮面は、以前福島県で見た悪魔祓いの「お人形様」と不思議と似ていました。先ほどの“カオナシ”と同様、遠く離れた地域でも、人々が生み出す信仰の形にはどこか共通するものがあるのかもしれません。

個性的なアフリカのファッション

アフリカエリアで印象に残ったのは、ナイジェリア・ヨルバ族の「エグングン舞踊」の衣装。祖先の霊の化身とされる存在で、共同体の平和を祈る儀礼などで踊りを披露します。

「エグングン舞踊」の衣装

また、セネガルやガーナの衣装、ビーズ製人形なども展示されていました。
アフリカというと素朴なイメージを抱きがちですが、実際にはさまざまな柄や意匠が用いられており、それぞれに個性があります。

おしゃれは世界共通
ビーズ製人形

ラクダも踊り子もいる西アジア

西アジアエリアでは、メッカの聖殿カアバを覆う「キスワ」が展示されています。
実物を見る機会などほとんどないので、かなり貴重です。

1966-67年に使用された「キスワ」

ほかにも装飾されたラクダやベリーダンス衣装などもあり、気づけばすっかり世界旅行をしている気分に。

続く南アジアのインドエリアでは、ドゥルガー女神の巨大な神像が光り輝いていました。

豪華絢爛なドゥルガー女神

ベンガル地方などでは毎年秋になると、村の広場に巨大な祭壇が作られ、人々は華やかな女神像を祀って盛大に祝います。そして驚くことに、祭りが終わるとその神像は川や海へ流されてしまうのだとか。
手間もお金もかかっていそうな立派な神像だけに、思わず「流しちゃうの!?」と驚いてしまいますが、こうした価値観の違いを知れるのが「みんぱく」です。

と、ここまで見たところで、入館してから1時間以上が経過。
本当はこの先の展示もじっくり見たかったのですが、帰りの新幹線の都合で今回はここでタイムアップに。展示数があまりにも多く、しっかり時間をかけないと到底見切れないことがわかりました。いつかリベンジしたいと思います。

まとめ|展示を見るというより世界旅行をする感覚

国立民族学博物館は、

民族学・文化人類学の研究活動と、その成果を展示公開する博物館活動を一体的におこなう博物館をもった研究所

と説明されています。
正直なところ、訪れる前は「真面目な学術資料が淡々と並ぶ場所」というイメージを持っていました。
しかし実際に歩いてみると、その印象は完全に覆されます。
モアイ像、トーテムポール、死者の日の骸骨、アフリカの仮面、西アジアの宗教文化……。
館内を歩くだけで世界各地の価値観や信仰に触れられ、「人間ってこんなにも多様なんだな」と実感できます。

太陽の塔と合わせて訪れたい、万博公園屈指の見応えを誇るスポット。
世界の歴史や信仰が好きな人なら間違いなく楽しめる個性派博物館だと思います。

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スポット情報・アクセス

・訪問スポット:(外部リンク:公式サイト
・住所:大阪府吹田市千里万博公園10-1(Googleマップで開く
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