九州

佐賀・びっくりハウス訪問、家主の馬田さんの方がびっくりだった

びっくりハウス
chinspotwalker

佐賀駅から車で約30分。
緑豊かな国道沿いに、異様な存在感を放つ建物がある。
その名も「びっくりハウス」

佐賀「びっくりハウス」
異様なオーラを放つ「びっくりハウス」

増築に増築を重ねた迷宮のような建築物で、一部の珍スポット好きの間では知られた存在だ。
今回のお目当てはもちろんそのアヴァンギャルドな建物だった。
しかし結論から言うと、私が本当に驚いたのは建物ではない。
家主の馬田亮一さん、その人だった。

びっくりハウスの主・馬田亮一

まずは簡単に馬田さんのプロフィールを紹介しておこう。

  • 昭和33年3月3日生まれ(見事なゾロ目)
  • 武蔵野美術大学出身
  • 若い頃は奈良美智と同居していたこともある
  • 大のビール好き
佐賀「びっくりハウス」
ビールをおいしそうに飲む馬田さん

そして何より強烈なのが、そのキャラクターだ。
自力で増築を繰り返したというこの建物を、馬田さんは「蟻塚」と呼ぶ。
実際に中へ入ると、そこはほとんど迷路である。
細い通路が複雑に入り組み、どこへ続いているのかわからない。
まるで巨大な生き物の体内に入り込んだような感覚だった。
撮影許可をいただこうと馬田さんに声をかけた。
すると挨拶もそこそこに、いきなり狂騒に巻き込まれることとなる。

アライグマの子どもがな、今3匹死んで、あと1匹おらんとよ!

何の話だ。
建物の説明ではなかった。

取材開始3分、私は「アライグマ捜索隊」になった

状況を理解できないままどんどん奥へ進む馬田さんの後を追う。
すると彼は草むらのほうを指差して叫んだ。

おったおったおったおった!

正直、私には見えない。しかし馬田さんには見えているらしい。
そして次の瞬間、

お前行け!

と前線へ送り込まれた。
突然言われても困る。
そもそも何が起きているのか、この時点でまったくわかっていない。
しかも足元にはアライグマの死骸が転がっている。
私の脳内では、「お前行け!」は
「俺が始末するから、お前が捕まえてこい!」
に変換されていた。

必死に抵抗した結果、最終的には馬田さん自ら捕獲へ向かい、
数分後、最後の1匹の捕獲に成功した。

佐賀「びっくりハウス」
素手でアライグマを捕獲する馬田さん

どうやら馬田さんは本気でアライグマを心配して、ここ何日も探していたらしい。
そして、まるで少年のような笑顔を見せて私に言った。

お前は持っとるばい!

この日、何度も聞くことになる言葉である。
どうやら私は幸運の使者認定されたらしい。

天然記念物の紀州犬と「100歳からの逆算」

アライグマ騒動が一段落すると、今度は犬の話になった。
敷地内には天然記念物の紀州犬が2頭いるという。

佐賀「びっくりハウス」の紀州犬
番犬(紀州犬)。めちゃくちゃ吠える

そう言えば、到着した瞬間に猛烈な勢いで吠えられた。
どうやらアライグマを仕留めたのは、この紀州犬たちらしい。
名前は「モモ」と「タロウ」。
もともとは山奥で暮らしていた高齢女性が飼っていた犬で、事情があって馬田さんが引き取ったのだという。

あいつら、アライグマ3匹噛み殺してしもた。でも罪はない。本能や。

馬田さんはそう語る。
狩猟犬として生まれた以上、それは責められない。
自然の摂理を受け入れるような口ぶりが印象的だった。

佐賀「びっくりハウス」
犬になつかれる馬田さん

会話は犬の話から人生論へ、政治の話へ、また人生論へと次々飛んでいく。

60歳になったら衰えると決めつける今の社会が気に食わん。
100歳までは生きられる。100歳から逆算して人生を考えろ。

そんな話も印象的だったが、何より私の脳裏に焼き付いているのは、それを語る馬田さん本人のエネルギーだった。

なぜか始まる腕相撲大会

そして気付けば腕相撲をする流れに。
なぜそうなったのかはわからない。
ただ手を組んだ瞬間に、馬田さんが強者であることはわかった。
最終的には右も左も勝たせてもらったが、60代後半とは思えない握力と腕力だった。
勝負が終わる頃には、ボクシングの試合後に抱き合う選手のような妙な連帯感が生まれていた。

佐賀「びっくりハウス」
なぜか腕相撲することに

ピカソを語らせたら誰にも負けない

汗を拭った後、繊細な人物画から抽象画まで、馬田さんの作品群を見せてもらう。

佐賀「びっくりハウス」
馬田さんの作品

ピカソの話題になると、一気に彼のプライドが火を噴いた。

ピカソについて語らせたら俺以上のやつはおらん!
ゲルニカも全部模写したけんね。

そして、自身の1枚の作品を指さして断言した。

この絵は最後には2億円になると思うよ。

佐賀「びっくりハウス」
2億の価値のある絵画

半信半疑(というか、ほぼ疑い)の私に対し、馬田さんは「1回目やから、お前にやる」と、近くにあった売り絵をあっさりとプレゼントしてくれた。商売っ気があるのかないのか、凡人の物差しでは最後まで測りきれない。ただ、手渡されたその絵の人物は、モナ・リザのような不思議に温かい微笑をたたえていた。

佐賀「びっくりハウス」
プレゼントしていただいた絵画

アライグマに捧げる即興ソング

最後は2階へ案内された。
将来的にはアトリエや展示スペースにする予定らしい。

佐賀「びっくりハウス」
ゆくゆくはアトリエになる部屋

そこで突然、馬田さんは今日助かったアライグマのために即興で歌い始める。

命をもらった君に……ささやかな命を……

打ち込みのコードとともに響く歌声は、力強く、どこか切ない。
さらに話題は音楽へ。
私が「中島みゆきが好きです」と言うと、馬田さんの目が輝いた。

あの人は天才どころじゃない。女神や!
よく聴け。「時代」と「ファイト!」と「宙船」、全部歌い方が違う。

その後も松任谷由実やサイモン&ガーファンクルの話が続き、気づけば訪問してから1時間が経過していた。

佐賀「びっくりハウス」

まとめ|びっくりしたのは建物ではなく人だった

正直、この日はびっくりハウスを取材しに来た。
もちろん、びっくりハウスも十分すぎるほど強烈だった。
しかしそれ以上に強烈だったのは馬田亮一さん本人である。

  • 出会い頭のアライグマ捜索
  • 天然記念物の紀州犬
  • 人生論
  • 腕相撲勝負
  • 絵画のプレゼント
  • 即興ソング披露

取材というより遭遇。
観光というより体験だった。
不思議なアートハウスで過ごした時間は、これまで訪ねた数々の珍スポットの中でもかなり異色だったと思う。
そして正直なところ、文章だけでは馬田さんの魅力を伝え切れた自信がない。
ぜひ動画も観てほしい。

最後に1つだけアドバイスを。
もしびっくりハウスを訪ねるなら、手土産にビールを持っていくことをおすすめする。

YouTubeで見る

スポット情報・アクセス

・訪問スポット:びっくりハウス
・住所:佐賀県佐賀市大和町大字梅野271-1付近(Googleマップで開く
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