長崎・片島魚雷発射試験場に眠る「廃墟美」と戦争の記憶

今回紹介するのは、長崎県東彼杵郡川棚町にある戦争遺跡「片島魚雷発射試験場」です。
ここは知る人ぞ知る、美しすぎる廃墟遺構。
アニメ映画「バケモノの子」のモデルや、flumpool「ラストコール」ミュージックビデオのロケ地としても知られ、その独特な景観に惹きつけられる人が絶えません。しかし、その正体は日本の軍事技術の最前線を支えた、極めて重要な施設でした。
森の奥に突如現れる、巨大なコンクリート構造物
片島魚雷発射試験場は大正時代に建設され、佐世保海軍工廠や川棚海軍工廠で製造された魚雷の性能試験が行われていました。
ここで合格した魚雷が、佐世保鎮守府へと送られていたそうです。
Googleマップを頼りに現地付近までやってきましたが、道がはっきりせず、なかなかの難解ルート。半ば勘を頼りに森の中を進んでいくと、突如として巨大なコンクリートの塊が眼前に広がりました。
まず現れたのは兵士たちの飲料水や生活用水を蓄えていたとされる「貯水槽」。
さらにその奥、森を抜けた先に現れるのが、この場所のハイライトである「空気圧縮ポンプ所」です。


空気圧縮ポンプ所(メイン遺構)
魚雷に空気や燃料を充填していたこの建物は、仕切りのない広大な2階建て構造。
朽ちたコンクリートに這う蔦、屋根から差し込む光、そして静寂。ここはあえて過度な整備をせず、現状のまま保存する方針が取られているそうで、その“生々しい美しさ”には、廃墟好きな人ならずとも言葉を失うはずです。
かつてここでは、あの人間魚雷「回天」に転用された九三式酸素魚雷などの試験も行われていました。この美しさの裏に、戦争という冷徹な現実があったことを突きつけられます。



魚雷射場と大村湾
ポンプ所を抜けると、目の前には穏やかな大村湾が広がります。
海へ突き出すように設置された「魚雷射場」には、魚雷を運ぶための軌道(線路跡)が今も残っており、往時の生々しさを伝えています。

ここで1日に約8本の魚雷が発射され、そのうち合格ラインに届くのはわずか3本程度。かつては軍の最高機密施設として一般人の立ち入りが厳しく禁じられていたこの海も、今はただ、波の音だけが響く穏やかな場所となっています。
さらに奥には、発射した魚雷の行方を確認するための「魚雷発射塔」が佇んでいます。
レンガ造りの構造をコンクリートで覆った独特の造りをしており、この剥き出しになったレンガの質感がたまりません。
太平洋戦争期だけでなく、大正時代から日本が軍事国家へと突き進んでいった流れを、このレンガが記憶しているかのようです。


片島魚雷発射試験場は、美しい自然と無機質な遺構が共存する、不思議な場所でした。
それは単なる「廃墟」ではありません。日本の軍事技術の歩みと、戦争の記憶が深く溶け合った“記憶を留める風景”です。
周囲を包み込むのは、どこか切なくも美しい静寂。
かつて軍の機密を担ったこの場所で、今日もまた穏やかな波が、レンガ造りの発射塔を静かに侵食し続けています。


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スポット情報・アクセス
・訪問スポット:片島魚雷発射試験場(観光サイト)
・住所:長崎県東彼杵郡川棚町三越郷片島(Googleマップで開く)
・全国珍スポMAP(戦争遺跡などジャンル別に絞り込みできます)




