380億円の執念。バブルの夢が生んだ巨大寺院「越前大仏」

福井県勝山市。ここに、奈良の大仏を凌ぐサイズの大仏が存在することをご存知でしょうか。
その名は「大師山 清大寺」、通称「越前大仏」。
実際に訪れてみると、驚くのは大仏のサイズだけではありません。
広すぎる敷地、静まり返った門前町、そしてバブルの夢が残る巨大建築群――。
そこには、宗教施設でありながらテーマパークでもあり、そして「一個人の執念」が混ざり合った、唯一無二の空間が広がっていました。
駐車場から始まる「スケール感」の麻痺
現地に到着して最初に圧倒されるのが、駐車場の広さです。
広大な駐車場スペースが2つあり、合計で約400台を収容可能。かつての爆発的な来客予測を物語っています。
越前大仏を擁する「大師山 清大寺」の敷地面積は約22ヘクタール。東京ドーム約5個分という、個人が建てたとは思えないとんでもないスケールです。ここから門前町を抜け、大門、大仏殿、五重塔へと続く旅が始まります。


私財380億円を投じた“タクシー王”の夢
敷地内にある石碑には、「多田清」という人物の名が刻まれています。
この人物こそ、越前大仏を含む「大師山 清大寺」を建立した張本人。
多田氏は1905年(明治38年)、福井県勝山市生まれ。
幼少期は極貧生活を送りながらも、さまざまな仕事を経験し、後にタクシー業界へ進出。
大阪を代表する「相互タクシー」を築き上げました。
晩年は“タクシー王”と呼ばれるほどの存在となり、多くの慈善事業や寄付活動を行います。
その集大成として、生まれ故郷に総工費380億円とも言われる巨大大仏を建立する計画が始まったのです。

こうして1987年、越前大仏は開眼供養が行われました。
しかし、当初は現在のような宗教施設というより、観光色の強い“テーマパーク型施設”としてのスタートでした。
理由は、勝山市に固定資産税などを納めるためだったとも言われています。
当時の拝観料は3000円。
ただ、歴史が浅く“ありがたみ”が弱かったため観光客は伸び悩みました。
そこに
- 巨大施設ゆえの維持費
- バブル崩壊
が重なって1996年頃から税金滞納が始まり、2002年には臨済宗妙心寺派が宗教法人として運営を引き継ぎます。しかし過去の滞納問題は残り、勝山市は敷地の差し押さえや競売を実施。
ただ、競売価格が35億円という巨額だったこともあり、買い手は現れませんでした。
最終的に2018年、勝山市は約40億円の滞納分を「不能欠損処理(回収不能)」と判断。
かなり数奇な運命を辿ってきた場所なのです。
人がいない門前町が放つ“異様な静けさ”
浅草の仲見世通りのような賑わいを想像して門前町に入ると、そのギャップに言葉を失います。
店舗は並んでいるものの、営業している店はごくわずか(2店だけ)。ほとんどのシャッターが閉まっていて、まるで映画のセットのようなゴーストタウン感が漂っています。
しかし、この“がらん”とした静けさこそが、巨大寺院のスケール感や異様さを際立たせていました。

寺の入口となる「大門」には、高さ約7.5mの巨大な仁王像が鎮座しています。
この像は中国で3年半かけて制作され、福井の三国港まで船で運ばれ、そこから大型車両で陸送されたという代物です。



門を抜けると、樹齢1500年以上の台湾ヒノキの柱が152本も並ぶ長大な回廊が続きます。
雪深い勝山の冬でも、濡れずに参拝できるこの回廊の重厚感には、多田氏の「本気」が透けて見えます。


ついに越前大仏と対面
いよいよ大仏殿の内部へ。

……圧倒的です。
越前大仏(坐像)の高さは17m。奈良の大仏(約15m)より一回り大きく、光背を含めた総高は約28mにも及びます。
使用された銅は約220トン。
鋳造大仏としては、当時世界最大級とも言われていました。

さらに驚くべきは、壁面を埋め尽くす1,281体もの小仏像。
これらすべて、一体ごとに表情や手の形が異なります。人が少なく、冷たく澄んだ空気が流れる大仏殿で千数百もの視線に囲まれると、背筋が伸びる思いです。



中国皇帝の建築を再現した「九龍壁」
続いて訪れたのが「九龍壁」。
9匹の龍が描かれた巨大な壁で、中国・明清時代には皇宮前などに設置された建築様式です。
ここにある九龍壁は、北京・北海公園にあるものを再現したと言われています。
龍が宝玉を追う姿が描かれており、使用された陶板と瑠璃瓦は8263枚。
瑠璃瓦の光沢が鮮やかで、本家に劣らぬ迫力があります。




五重塔はエレベーター付き
最後に向かったのは五重塔。
高さは75mあり、京都・東寺の五重塔(約55m)を上回ります。
ただし、こちらは木造ではなく鉄筋コンクリート造なので、単純比較はできません。

そしてエレベーターで4階まで行き、最後は階段を使って5階へ登るとーー
勝山市街地や大師山を一望できます。

さらに別角度からは、越前大仏の大仏殿も。
奥には、これまた多田清が建設した「勝山城博物館」の姿も見え、この地を愛した多田氏の気持ちを追体験するような気分になれます。

まとめ:“バブルの夢”が生んだ数奇な運命
1987年の開業以来、越前大仏は数奇な運命を辿ってきました。
- バブル崩壊による観光客の伸び悩み
- 税金の滞納と差し押さえ、競売(買い手がつかず)
- 約40億円の滞納分を市が回収不能と判断
巨額の資金が投じられ、一度は「失敗」の烙印を押されかけた場所ですが、現在はSNSを通じて外国人観光客が急増し、滞在時間が劇的に伸びているという報道もあります。
歴史や権威ではなく、一個人の「情熱と財力」が力技でねじ伏せたようなこの巨大空間。
巨大建築やバブル遺産が好きな人なら、一度は訪れる価値のある、福井が誇る超弩級のスポットです。
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スポット情報・アクセス
・訪問スポット:大師山清大寺 / 越前大仏(公式サイト)
・住所:福井県勝山市片瀬50-1-1(Googleマップで開く)
・全国珍スポMAP(神社仏閣などジャンル別に絞り込みできます)


