山形

山形は想像以上のレトロ建築都市だった|明治・大正の名建築歩き

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山形市の中心街を歩くと、この街ならではの景観に気づかされます。
それは、明治時代の重厚な蔵、大正ロマンを感じさせる洋風建築、老舗料亭、そして壮麗な旧県庁舎が、わずか数キロ圏内に美しく同居しているということ。

山形の魅力は、これらの歴史的建造物をただの「過去の遺物」として凍結保存するのではなく、現代の息吹を吹き込み、街づくりの主役として活用している点にあります。今回は、過去と現在が自然に溶け合う、山形のレトロ建築を巡る散策の記録です。

明治の商都・山形を伝える蔵造り

旅の始まりは、十日町にある「山形まるごと館 紅の蔵」から。
この建物は、1901(明治34)年に建てられた長谷川家の蔵屋敷で、かつて紅花商人として栄えた豪商の財力を今に伝えています。現在は観光案内所や物産館、レストランなどを備えた複合施設へと生まれ変わり、中心市街地活性化の拠点となっています。
敷地の広さからも、当時の繁栄ぶりがうかがえました。

山形まるごと館 紅の蔵

すぐ近くに佇む「丸太中村近江屋」もまた、山形の商業史を語る上で外せないスポットです。こちらは1858(安政5)年に砂糖や繊維の問屋として創業した近江商人由来の老舗。現在の蔵は、1894(明治27)年に約1600戸を焼き尽くした山形大火の直後に再建されました。大災害を乗り越えた力強い明治の建築が、今なお現役で活用されています。

丸太中村近江屋

江戸時代の用水路を復活させた「七日町御殿堰」

山形らしい「温故知新」の街づくりを特に象徴しているのが、七日町にある「七日町御殿堰」です。

七日町御殿堰

ここは約400年前、山形城下に生活用水や農業用水を供給するために開削された用水路「御殿堰」を再生して整備した商業施設。かつては時代の変化とともに暗渠化され姿を消していましたが、中心市街地活性化事業の一環として2010年に復活しました。

衰退する地方の中心市街地を再開発するにあたり、新しいランドマークを造るのではなく、江戸時代の遺産を現代に蘇らせたという発想が面白いところです。水路沿いにはモダンな木造町家風の飲食店や店舗が並び、歴史と現代が自然に共存する空間となっています。

伊藤博文が名付けた老舗料亭「四山楼」

御殿堰からすぐの場所には、1873(明治6)年創業の老舗料亭「四山楼」が静かに門を構えています。

その雅やかな名は、山形市街から見渡せる四つの名山(蔵王山・月山・葉山・朝日岳)に由来し、この地を訪れた初代内閣総理大臣・伊藤博文が命名したと伝えられています。
現在の主屋は1911(明治44)年築の木造二階建て。敷地奥にある蔵座敷とともに国の登録有形文化財に登録されています。
山形の近代化と繁栄を今に伝える、上質な料亭建築です。

大正ロマンを感じる近代建築群

山形市中心部の面白さは、大正から昭和初期にかけて建てられたモダン建築が、街角にごろごろと残されている点です。

まず目を引くのが、1912(大正元)年築の洋館「旧吉池医院」。設計を手掛けたのは、後に紹介する文翔館の設計顧問も務めた中條精一郎です。軽快な洋風デザインは、当時の山形市民にとって憧れの最先端モダンだったに違いありません。現在は閉院していますが、「旧吉池医院」として保存活用が進められています。

その目と鼻の先にある「西村写真館」は1921(大正10)年築。当時の当主が自ら設計したとされる建物で、淡いペパーミントグリーンの外壁と繊細な装飾が美しく、まるで映画のセットのようです。

西村写真館

さらに街中を歩くと、1925(大正14)年築の「七日町二郵便局」が現れます。もともとは洋品店として建てられ、当時は2階にダンスホールやビリヤード場を備えた最先端の娯楽空間でした。1972年に郵便局へと転用され、今なお現役。その圧倒的なレトロの魅力から、日本郵政のオフィシャル企画「エモい郵便局図鑑」にも選出されています。

七日町二郵便局

さらに、1927年(昭和2年)築の「市島銃砲火薬店」も見逃せません。
山形市内初のRC造の店舗建築とされており、火薬や猟銃という危険で重厚な物品を扱う店舗にふさわしい、要塞のような重厚なファサードが強烈な存在感を放ちます。こちらも国の登録有形文化財に指定されている名建築です。

市島銃砲火薬店(右)。隣にも古そうな蔵がある

山形近代建築の頂点「文翔館」

山形レトロ建築巡りの大トリ(ラスボス)を飾るのが、街の北端に堂々と聳え立つ「文翔館」です。

威風堂々たる文翔館

1916(大正5)年に完成した旧山形県庁舎および県会議事堂で、イギリス・ルネサンス様式を基調とした、山形の近代化を象徴する大正ロマン建築の傑作です。1975年まで県庁として使用された後、国の重要文化財に指定され、現在は山形県郷土館として一般に無料公開されています。

館内に足を踏み入れると、まず圧倒されるのが豪華な内装です。
重厚な大階段、大理石の柱、精緻な漆喰装飾。
旧県庁舎とは思えない華やかさで、まるでヨーロッパの宮殿を訪れたかのような気分になります。


皇族や高官のための貴賓室や知事室も残されており、知事室は映画「るろうに剣心」のロケ地としても使用されました。
石畳の中庭から見上げる時計塔も見事で、どこを切り取っても絵になります。
しかも、これだけの建築を無料で見学できるのだから驚きです。

バルコニーからの眺め

まとめ|歴史を最大の付加価値に変える街

山形を歩いて感じたのは、歴史的建築を単に保存するのではなく、現代の街づくりの中で生かしていることでした。

明治の蔵は観光施設となり、江戸時代の用水路は商業空間としてよみがえり、老舗料亭は今も営業を続けています。そして大正ロマンを象徴する文翔館は、市民に開かれた文化施設として親しまれています。

古い建物を取り壊して画一的な地方都市を目指すのではなく、歴史そのものを街の魅力に変えている。その姿勢こそが、山形という街の最大の魅力なのかもしれません。

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スポット情報・アクセス

・訪問スポット:山形まるごと館 紅の蔵(外部リンク:公式サイト
・住所:山形県山形市十日町2-1-8(Googleマップで開く

・訪問スポット:丸太中村近江屋(外部リンク:公式サイト
・住所:山形県山形市十日町2-4-10(Googleマップで開く

・訪問スポット:七日町御殿堰(外部リンク:公式サイト
・住所:山形県山形市七日町2-7(Googleマップで開く

・訪問スポット:四山楼(外部リンク:公式サイト
・住所:山形県山形市七日町2-6-4(Googleマップで開く

・訪問スポット:旧吉池医院
・住所:山形県山形市十日町2-4-16(Googleマップで開く

・訪問スポット:西村写真館
・住所:山形県山形市本町2-1-51(Googleマップで開く

・訪問スポット:七日町二郵便局
・住所:山形県山形市七日町2-7-20(Googleマップで開く

・訪問スポット:市島銃砲火薬店
・住所:山形県山形市七日町5-10-53(Googleマップで開く

・訪問スポット:文翔館(外部リンク:公式サイト
・住所:山形県山形市旅篭町3-4-51(Googleマップで開く

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